皆さんこんにちは!
とらのいスパイスの店長です。
2023年11月、お店を閉店したとき、私は心に決めていました。
もう二度とカレーの世界には戻らない。
こちら(24年も続いたカレー屋さんを娘のわたしが継がなかった5つの理由)の記事でもお話ししたように、家業であるお店を継がないという覚悟をきちんと決め、これからは会社員として生きていく。
そう決めて、きれいに終わらせたのでした。
カレーやスパイスが嫌いになったわけではありません。
ただ、15歳の頃からずっとカレーの世界にいた私は、まったく別の世界で働いてみたかった。それが大きな理由のひとつでした。
そんなわたしがなぜ再びカレーの世界に戻ってくることになったのか。
どんなきっかけがあったのか。
今日はそんなお話しをしていきたいと思います。
ちょっと今回はいつもよりさらにパーソナルなお話し。
今までお話ししていなかったことも明らかにしてきたいと思っています。
長くなりそうなので前後編でお届けいたしますね!
よかったら最後までお付き合いください🐯

きれいにラッピングされた「ぱお」という存在
ありがたいことに、ぱおはとてもきれいな形で終えることが出来たと、わたしも家族も自負しています。
お客様に早い段階で立ち退きと閉店をお知らせし、多くの方に「ありがとうございます、さようなら」をお伝えすることが出来ました。
閉店前の超絶ラッシュもありましたが、最後まで駆け抜けた!
そう自信を持って言えます。
わたし個人としても、30代半ばにして「ひとつの事業を完璧にやり遂げた」
と、胸を張れるような、そんな終わり方でした。
個人の飲食店という事業を、借金を1円も残すことなく、お客様に惜しまれる形で終わらせる。
これって本当にすごいことだと思うし、やり遂げたママさんすごい。わたしも頑張った!
そんなふうに母娘で抱き合うくらい(笑)。
だからこそ、ぱお」はきれいにラッピングをしてフタを閉じた宝箱みたいなもので、
これは2度と開けることはない、と思っていました。

広告代理店で突きつけられた「価値」
ぱおが閉店した翌年から、わたしが会社員として働き始めたのは、webメディアを扱う広告代理店でした。
InstagramやFacebook、Googleなどの広告を扱う会社です。
そこで私が「元カレー屋さん」だと知られるようになると、
「通販でカレーを売ってみたら?」
「スパイスなら在庫もいけるんじゃない?」
そんな声をかけられるようになりました。
正直、かなり抵抗がありました。
終わらせたはずの店を、もう一度いじる気はなかったからです。
でも広告代理店という場所は、容赦なく“価値”を言語化してくる世界でした。
レシピ、スパイスの知識、24年間続いた飲食店という事実。
惜しまれながら閉店したこと。そこに通ってくれていたお客様の存在。
もちろん、お店をやっていた時から「なんてありがたいことだろう」という感謝の気持ちはありました。
でもね、立ち退きになるほど古いお店で、インスタ映えするメニューがあるわけじゃない。
観光客が押し寄せる店じゃない。
「地元のお客様に愛されるカレー食堂的な立ち位置」
だと思っていたし、それがぱおらしい!なんて思っていました。
でも第三者から見ると、ぱおの価値はそんなもんじゃなかったみたいでした。
飲食店の約5割が3年以内に廃業する、10年続くお店はたったの1割。
そう言われている中で24年続いていたこと。
味だけではなく、スタッフのサービスやお客様との信頼関係が積み重なっていたこと。
離れてみて改めて、わたしはその価値を教えてもらいました。
ずっと「中の人」でいると、そのものの価値は見えなくなってしまう。
わたしが持っていたものは、飲食店をやりたい人、自分のプロダクトを作りたい人にとっては、きっと光り輝く宝物だったのだと思います。
第三者からこんなにも価値を言語化され、わたしが思っていた以上の素晴らしいお店だったと知るきっかけになりました。

わたしだけがこの味を食べていていいのか。
お店を閉めてから、ママさん(母)が、お店に残っていたスパイスを家に持ち帰り、スープカレーを作ってくれることがよくありました。
父(マスター)も、わたしも大好きだったスープカレー。
札幌にはたくさんのスープカレー屋さんがありますが、あの味は、私にとって特別なものでした。
トマトと玉ねぎが溶け込んだ、やさしいスープ。
チキンのブイヨンのコク。
そこに重なる複雑なスパイスの香り。
「次、いつスープカレー作ってくれるの?」
そんなことを何度も聞くほど、わたしはその味を恋しく思っていました。
だってそうですよね、毎日食べていたんですもの!笑
もはや中毒。
カレーを食べていないと体調が悪くなる。。。
だからしょっちゅう「作って!」とせがんでいました(笑)
でも、家庭で作るカレーと、お店で作るカレーはまったく違います。
一度に50人分を作る寸胴鍋と、家庭用の鍋。
火力も分量も、何もかもが違う。
それでもママさんは、30年近いカレー屋さんの経験と、40年以上の主婦の経験で、家庭用のスープカレーを見事に再現してくれました。
もうね、作るたびにどんどん上手になるんです(笑)
で、わたしもしょっちゅう食べたいから毎回ベタ褒めしまくって(笑)
私はそのカレーを食べながら、いつも思っていました。
「この味を、あの人にも食べてもらいたいな」
「あの人なら辛さ○番で食べるんだろうな」
「あの人は、美味しいカレーに出会えているかな」
あの人、と顔が浮かぶのはたくさんのお客様たち。
おうちで作るスープカレーがどんどんお店の味に近づくたびに、その思いは強くなっていきました。
そして、こうも思うのです。
「わたしだけがこの味を食べていていいんだろうか」
と。
この味をあの人に食べてもらいたい。
わたしの中で、とても純粋な気持ちが湧き上がって来ていたのです。
(後編に続く)

お店を辞めて半年後にママさんが作ってくれたおうちスープカレー。
すでに完成度が高いです!